2023年幕開けの棋戦といえる第72期王将戦では、藤井聡太竜王(当時。現在は竜王名人)と羽生善治九段とが戦いました。
王将戦は先に4勝した方がタイトルを獲得できる棋戦で、結果は藤井竜王の4勝2敗でタイトル防衛を果たしました。
実はこの二人は公式戦で14回戦っていて、
昨年末まで羽生九段は藤井竜王に対して1勝しかしたことがありませんでした。
それが今年のタイトル戦では羽生九段が2勝も挙げたので大変話題になりました。
羽生九段というと「羽生マジック」と呼ばれる意表を突く一手を指す棋士として有名です。
意表を突く=定石から外れることでもあり、本来なら「やってはいけないこと」ですが、
羽生九段は「定石を超えた一手を指す」ことで、たくさんのタイトルをとってきた、将棋界のレジェンドです。
そして、その羽生九段の「常識破り」のさらに上をいくのが藤井竜王です。
藤井竜王の戦い方もまた「常識破りの手」の連続で、
プロをあっと言わせる手を繰り出し、
さらに「藤井曲線」と呼ばれるミスをしない戦い方で将棋界の頂点に立ちました。
さて、それまで1勝しかできなかった羽生九段はどうして今年のタイトル戦で2勝もできたのでしょう?
羽生九段は自分が先手のときに2勝しました。
将棋は先手が有利です。
先手は“自分の試合運び”を選ぶことができるので、前もってどんな試合運びにするか決めることができるからです。
将棋はこの「前半の駒組み」に加え「中盤~終盤の読み」「持ち時間の使い方」で勝負が決まります。
そこで、羽生九段は最初から意表を突く駒組みをし、
さらに中盤でも「羽生マジック」を彷彿とさせる攻めの手を出し続け、
勝負で最も大事な後半~終盤で一度も読みを間違えず、余裕をもった時間の使い方で藤井竜王に勝つことができたのです。
タイトル戦では、藤井竜王は有利な先手はもちろん、
不利な後手でも羽生九段に勝って、このタイトルを防衛しました。
羽生マジックと藤井曲線。
藤井竜王名人と羽生善治九段の次の試合は、王座戦挑戦者決定トーナメント準決勝です。
二人がどんな勝負をするのか今から楽しみですね。
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